NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀〜人生に寄り添う一着を〜デザイナー皆川明」を観て。
こんにちわ、SUMIKICHIです。
たまに観ているNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」。私は、基本的に、番組欄の短い宣伝文だけで観るかどうか決めていますが、この回は、〜人生に寄り添う一着を〜のテーマで、流行に左右されない、“新しい”を求めていないのになぜか“新しい”、浮き沈みの激しい業界で、この21年間売り上げが下がったことがない、などの点に興味が湧き録画視聴いたしました。デザイナー・皆川明氏のことは、存じ上げなかったのですが、番組で見た雑貨や家具の柄は、よく見かけるような気がします。花や動物、幾何学模様などの素朴なモチーフ。ブランドファッションは自分に似合うとは思っていなくて、高価だと手入れも緊張しますから、手を出すことなく生きてまいりました。ですが、この〜人生に寄り添う一着を〜というのは、そういった世界の服ではなさそうでしたので拝見いたしました。
洋服自体は、自分のイメージではないかな、と思いましたが、デザインの発想や想い、仕事観などにすっかりハマッてしまいました。
番組の詳細な内容や洋服の映像は、番組HPをご覧頂けば一目瞭然ですので、私の印象に残った、琴線に触れた言葉などを綴らせて頂きます。
流行やマーケティングは考えない。拠りどころはひとつだけ、それは
「周りの人に喜んでもらえると思って描けば描くほど、自分の思いは小さくなる。自分が喜んで描くものは、人も喜んでくれると信じて、精一杯やるしかない」周りを喜ばせたいと思いすぎると作為が勝ちすぎる。
日常のモチーフなのにどこか不思議。その秘密は、
例えば、砂時計。砂が落ちて行くのを、人生に例えて、残り時間が少なると見るより、落ちて積もる砂を記憶が増えて行くとポジィティブに捉える。
どんなに作りこんでも、作為のない無為の美しさにはかなわない。例えば、消しゴムのカスの積み重なったカタチや紙のゴミ屑の色合いなどにも美しさを感じる。
皆川明氏。49歳。高校卒業後、進学も就職も決まらず、ふらりと行ったパリで、全く知らないファッションショーの手伝いをしたのがきっかけで、ファッションを一生の仕事にしようと決めた。なぜか運命だと感じた。もうひとつ。
『一生続けようと心に決めたのは、黙々と仕事をする父親の姿を思い出したから。中卒でサラリーマンになり、出世もなく定年までこつこつ働いた。一貫してやる!ということを父のようにしてみようと』
帰国後、服飾専門学校に入学したが、不器用でポケットひとつ満足につけられず劣等生だった。普通2年で卒業だが、3年かかった。それでもあきらめない。縫製工場などでアルバイトをし、縫製技術を磨いた。27歳で、古い一軒家を借り、たったひとりでブランドを立ち上げた。その時決めたのは、生地作りを自分で手掛けるということだけ。
『服としてのフォルムだけでは自分は能力が足りないなと思った。布からなるべく全てに自分が全精力を注がないと評価されないんじゃないかと思ったんです』
お金も信用もない。工場にかけあい、給料無しのかわりに生地を作らせて貰った。それでも、服は売れず、続けられるか迷った時に思い浮かぶのは、やはり父のこと。家族のために地道に働く姿を。
『ずっと続けていることへの尊敬があったりしましたから、自分もこの仕事を楽しいとか、つまらないとか、うまくいくとかいかないとかいうことで、この職業を捨てるつもりはないし、それによって自分の仕事を計ることもなく、とにかくいろんなことを飲み込みながら、とにかく続けるってこと・・・』
4年後、転機が訪れる。セレクトショップ店長の目にとまる。流行に左右されない世界に惹かれたと。そして、向いてないと思いながらも走り続けて18年。評価が高まってきた。
『自分が出来ないことに出会った時に、そこで自分が出来ないっていう状態でいるよりは自分に出来ることを相対的に見つける。これは出来ないけれど、これは出来る、出来ないことはこういう良さがあるとか、マイナスの要素の中に、自分にとってはプラスってことがあるんじゃないかと思ってみたり、なんかそういうことをずっとしていたんだなと思います』
苦しい時もあった、遠回りもした、でも意味のないことなんてこの世にはない。
『その時間によって、自分は今、こういう人間になったんだなーってことはあります。』
沖縄の陶芸家とのやりとりで
『一気に書くっていうのがいいよね。いろいろ考えてやると、もたもたして線が面白くない。考えている時は、ごくごく限られたところでいいよね、パッと開いた時に、何倍も増幅する、それがつかみたいね』
『そういう意味では、思っていないと、その瞬間もないと思うんですけど、思っているうちはその瞬間ではないので、もやもやしてるってことはあると思う』
『思う方向に向かいたいと思いながら、思ううちはできそうもない、みたいなジレンマってありますよね』
皆川さんにとってプロフェッショナルとは・・
『使命と夢が両方携えられていることで、それは自分の人生の持ち時間を超えるぐらいのことであるっていうことがとても大事で、それをする時には、もう諦めのスイッチは切ってしまうっていう。なんかそういうふうにしていくって事がプロだなと思ったんです。』
番組の中での9割以上のコメントが、今の私に響いてきまして、もうとてもマネ出来ないけれどモノづくりに対する姿勢、価値観がよく理解できます。私も、無為の美しさに感動するタイプです。他人から見ると、なんでそんなゴミみたいなものが、というものでも。番組で紹介された新作は、試行錯誤を重ねて出来た、とっても素敵な刺繍の大輪の花。身に纏ってみたいなと思いましたが、私には、大きな花ひとつが腰のあたりにあるだけのTシャツとかがいいのかな。そんなことを思い浮かべたりできる皆川ファッションの世界。私も、自分で生地からデザインして作った服を着れたらと若い頃から思っていましたので、すごく興味津々でした。何でもかんでも憧れてるだけの人生だなぁ。実際、20代にワンピースやスカートなど、簡単な服を作って着たりしましたが、手間暇かかるし、細部の処理が雑ですぐ嫌になってましたね。でも、現在は時間がたんまりあるので、やろうと思えば出来るのです。ミシンを買わなきゃ、道具も揃えなきゃ、と考えると、またすぐ億劫になって・・・。思うばっかりです、とほほ。やりたい、やりたい、ほしい、ほしいと渇望する間は、ちっとも手に入らなくて、執着を手放した時なぜか出会うってことあるらしいですよね。でも、それは、渇望している間に、ひたすら地道に努力している事が前提にあってのことでしょう。いっぽ、一歩。そして、私に必要な、継続。
日々感謝です。