今日も、生涯の一日なり

自分軸で生きると決め早期退職した50代独女のつぶやき

「関ジャム 完全燃SHOW〜プロがやられた歌詞の技術13選〜」を観て。ここでも“何を書かないか”なのね。

こんにちわ、SUMIKICHIです。
たまに観る「関ジャム 完全燃SHOW」、個人的に好きな音楽番組です。今回のテーマは〜プロがやられた歌詞の技術13選〜。数々の名曲の作詞を手がける歌詞プロデューサーいしわたり淳治さんと物語性の強い歌詞で話題のバンド・クリープハイプ尾崎世界観さんが、J-POPだけでなく洋楽やインディーズまでジャンルレスにスゴい歌詞を紹介してました。現在、詩に関心があるので見逃すまいと拝見しましたら、大変勉強になりました。ざっくり備忘録しときましょ。各曲の解説文はいしわたりさんと尾崎さんの分析です。

 

では早速・・

【№1】≪愛して欲しい感情を正反対の言葉で強調≫
  KOH+『最愛』(作詞・作曲 福山雅治

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普通の人が書くと、「離れていてもずっとおまえを愛してる」という凡庸な歌詞になりがちなものを、「愛さなくていいから」と逆説的に書いたことで言葉と感情に“ねじれ”が生じて、いい違和感となって機能している。

福山雅治さんの曲はスゴいテクが何気に入っている。例えば家族になろうよ』。

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“お父さん”“お母さん”をPOPソングでここまでカッコ良く使った人はいない。イメージとして、‘ほのぼの’→‘歌い手のの人柄’が出て優しく成り過ぎてしまう使いにくい言葉。デビューして一年の新人バンドだと、‘親に感謝!’みたいな感じになる。“お父さん”を使えるアーティスト性の強さもある。


【№2】≪タイトルにもなっている強欲的なワンフレーズがスゴい!≫
  天才バンド『君が誰かの彼女になりくさっても』

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全体のほとんどがきれいな言葉で書かれている分、サビの“なりくさっても”という一点に、まるでまるで圧縮されたZipファイルのようにいろんな感情がぎゅっと押し込まれている感じがする。言葉をあえて汚すだけで、歌詞における感情をしまう棚としての機能はぐっと上がるという、ひとつの例でしょうか。

 

【№3】≪ストレートでありながら発明的な歌詞≫
  奥華子『恋』

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このサビの仕舞い方が素敵。このフレーズの状況を数々のアーティストがいろんな言葉を使って描いていたのを、そのまま言っちゃった潔さ。誰もが漠然と思っていたことを言い当ててくれた感じというか、名前のない感情に名前がついた感じがする。


【№4】≪圧倒的な歌詞量の中に怒りと優しさが染みる曲≫
  竹原ピストル『例えばヒロ お前がそうだったように』
     ※あまりにも歌詞が多過ぎて歌詞は割愛

死んだ友人のことを歌った曲。普通、歌詞は共感できないとダメ、誰にも当てはまる言葉じゃないとダメという風潮を感じているが、この歌は逆で、すごく個人的なことを歌って、その分凄く力強いし圧倒的。死んでしまったヒロくんに対して‘今までありがとう’ではなく、亡くなったことに怒っていて、愛情を感じる。


【№5】≪言葉の持つイメージをあえて逆に使う手法≫
  真心ブラザーズ『流れ星』

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流れ星は、儚いイメージで消えていくところが良いとされているが、それを消えてしまうことが悲しいと表現している。良いものの象徴と思っていた流れ星の見方を変えた。

 

【№6】≪聴き手を心配させる女心≫
  片平里菜『この涙を知らない』

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【№7】≪SNS世代ならではの皮肉表現≫
  yonige『アボカド』

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【№8】≪普通なら興味ない他人の恋愛を魅力的にする作詞テク≫
  テイラースイフト『BEGIN AGAIN』 ※和訳

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彼のキャラクターだけでなく、元彼のキャラクターも、さらには私が自分のことをどう思っているかさえも、たった2行で表現している。ラブソングは基本的には他人の恋バナ。だから、聴き手に興味を持ってもらうには、二人の関係やそれぞれのキャラクターが魅力的に見える必要があり、それが上手く出来ている。テイラーの歌で歌詞を追いかける人は少ないと思うが、彼女の本当の魅力は半分くらい歌詞だと思っている。

この曲には、登場人物が、‘彼’‘元彼’‘彼女’の3人登場、邦楽だと‘僕’‘君’の2人になる。この3人目を出すのが難しい。英詞と日本詞の違いもある。英詞で‘he’‘she’は‘第三者’にも使えるが、日本詞では‘彼’‘彼女’となると‘恋人’の呼び方になってしまって、何を言ってるかわからなくなる。3人目を上手く出せてる邦楽があったら、書いた人は相当なテクのある人。


【№9】≪女性じゃないと書けない別れの情景≫
  aiko『恋人』

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女性ならではの‘怖さ’を感じた。これを聴いて以来、彼女(女性)に服をもらうのが嫌になった。

 

【№10】≪救いゼロな歌詞が逆に救われる曲≫
  フラワーカンパニーズ『吐きたくなるほど愛されたい』

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軽妙なリズムとかけ離れたとことん絶望した歌詞。究極に落ち込んだときに聴いて、涙が出るほど刺さった歌詞。最初から最後まで同じ熱量でネガティブなことを全く手を緩めず、とにかく絶望しているというのを伝え続けるとスゴい救いになる。最高にオチている人におススメ。


【№11】≪ある口調を使うことで自分の言葉にした曲≫
   斉藤和義『ずっと好きだった』

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‘だぜ’はちょっぴりキザな感じで、‘好きだったんだ’という純情と相まってとても素敵に響く。‘だぜ’の口調も本人のキャラクターあってこそのなせる技。いしわたりさんは、自身が詞を提供する側で、この‘だぜ’を許してくれるアーティストってあんまりいないと思う、作詞家的には嫉妬するカッコ良い仕上がりだと言う。


【№12】≪フレーズだけで行間を読ませる歌詞≫
   クレイジーケンバンドタイガー&ドラゴン

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‘俺の話を聞け’という汎用性の高いワードを、物語に隙間を持たせた粋な言葉遣いが秀逸な歌詞。歌詞は‘何を書くか’が重要だと思われがちだが、実は‘何を書かないか’の方が重要。‘いつから知り合いで’‘何に金を貸したか’みたいな話は野暮。そういうしみったれたことを書かないことで主人公のクールなキャラクターが色濃く立ち上がってくる。行間があった方が参加意識が出来る、‘書かない’意識の方が曲は面白い。


そして、歌詞を語る上で欠かせない人物・秋元康さんについて分析。
秋元さんは、とにかく作品が多く、手数も多い。その凄さがわかる一曲。
【№13】≪限られたフレーズで画を想像させる歌詞≫
   乃木坂46『制服のマネキン

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聴き手が10人いたら、物語のあらすじと映像を全員同じように想像できる表現方法。
この詞の内容を普通の人が書いたら・・
  僕らは学校からの帰り道、
  自転車を押しながら歩いて
  河川敷に座った
  どうして君は何も言わないの?
  僕が何か言ったら嘘になりそうで・・なんたらかたら

秋元さんのは、一行々映像のワンシーン的に詞が書かれていてカメラワークが優れている。

他にも“ごくせん方式”というのがあり、例えば、‘極道’と‘先生’のように対立する無関係な言葉を組み合せて作る。この二つの言葉をどうやって結びつけるかというと、“ドラマ”を作る。これをやっているのが、例としてSKE48『12月のカンガルー』。

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‘12月’と‘カンガルー’は本来無関係、そこでA・Bメロで“(ドラマ)”の説明、サビで‘12月カンガルー’の完成。歌詞は、ふり幅が遠いほどドラマを想像したくなる。

 


なるほど。皆さん、面白い分析をなさいますねぇ。そこまで深く考えることないのですが、説明されると妙に納得できることがたくさんございます。自分では言葉にできないけど、なぜか言葉やストーリーに引っ掛かりを感じながら好きで歌ったり、聴いたりしてまして、そうそう、そうなのよ、あるいは、そうだったのかぁ、と腑に落ちました。それにしても、歌詞自体も上手いんだと思いますが、いしわたりさんたちの説明がそれ以上に興味深くて、さすが売れっ子さんは経験値、研究量が並みじゃないですね。

私の世代では、松本隆さんとか阿木燿子さんとかの世界観で育ちましたので、また違う感覚ではあるんですけどね。あっ、オフコースさん、さだまさしさん、松山千春さん、長渕剛さん、などなど大御所もいらっしゃいました。個人的には、小学生?でしたでしょうか、『木綿のハンカチーフ』の設定が大流行し、仲間内で遠距離恋愛の話になると、いつもその曲名が比喩となって登場してました。都会の絵の具に染まるなよ、とかいってましたね、おませだったなぁ。話がソレました。楽しいですね、歌の話って。こんな番組が増えたら、一億総作詞家みたいなことになりますね。

日々感謝です。