今日も、生涯の一日なり

自分軸で生きると決め早期退職した50代独女のつぶやき

NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀〜いつだって、人間は面白い 脚本家・倉本聰〜」を観て②。「走る」・・。

こんにちわ、SUMIKICHIです。

別記事NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀 脚本家・倉本聰」①の続きで、舞台「走る」についての印象に残ったコトを備忘録しときましょ。

 

sumikichi52.hatenablog.com 


去年秋に発表された、最後の舞台演出になるであろう「走る」。90分ひたすら走る。それ以外のしぐさはほぼなく、台詞も走りながら言う。

なぜ人は走るのか、そこから生きることの意味を問う。役者たちが走るマラソンは人生を象徴する。一歩でも他人よりも先に出ようと競うレース。だが、その裏で誰もが想いや葛藤を抱えている。卑怯な思惑、不運が交錯する、それでも走り通さねばならない人生とは何なのか。役者は総勢40名。多くは駆け出しだが、体力には自信があるメンバー。

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まず、自宅に役者たちを招き全員とじっくり語らい考え方を探っていく。40人分の個性を観察し、キャラクターを練り上げる。そして、全員の配役が書き込まれた台本を配り、そこから台詞とキャラクターを作って行く。

  過去を忘れるために走ってるんだったら
  過去を忘れるために台詞を言って。
  “あいつ”の顔を誰か思い浮かべて、君の中で。

  人に聞かせられない話という秘密のニュアンスをもう少し出してごらん。

  君の場合、(舞台に出てきて)楽しくなさそうなんだよ。
  今はね、顔がこわばっちゃってるから。自分で感じない?
  その不安感は払拭した方がいいよ。


メンバーの多くがプロ志望だが、経験豊富とはいえない。脚本の意図、台詞の言い回し、その時の表情などを丁寧に伝えていく。連日5時間を超える指導。神経も体力も消耗する。

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台本の台詞を大幅に変更。2週間前になっても、芝居の精度が上がらない。倉本さんの顔が険しかった。

  君、(台詞の)本当の意味を探ろうとしていない。
  何か練習しているように思えないんだよ、
  朝やって、今やってもめちゃくちゃ落ちてる。
  君らの年は勉強すればぐぅーっと上がっていくんだよ、
  その時期ってのは短いんだよ。
  20歳、30歳、40歳、ここらへんなんだよ、一番伸びるのは。
  その時期を逸しちゃったらね、もう死ぬのを待つだけ。
  本当に今しかできない努力ってのがあるんだよ。
  ここまできてるんだから、いい舞台にしようよ、ね。

数年前から、負担を減らすため、経験ある役者だけを起用してきた。だが、今回若手に一から教える負担も承知で「走る」を選んだ。

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82歳を駆り立てるものとは何か?
「僕自身は、まだ完成していないと思うし、今進歩の途上だし、まだまだこれから。どこか途中で一生を終えちゃうんだと思うけど、完成なんてこの世にはないですよね。ただ新しい感動がそこで生み出せたかってことを毎回考えるっていうことがプロの仕事だし、今の僕にとっての生きる原動力もそこにあるような気がする」

倉本さんは、本番前日まで台本を直し続けた。
1月16日、本番初日、満席。

  俺より前に出たら殴るぞ
  必ずいるンだ
  口実を見つけては人の足を引っ張る
  引っ張って動揺させ リズムを狂わせる心理作戦
  今はそんなこと 考えてる時じゃない
  あせるな あせりは敵だ!
  よし、3番はもう煮詰まってる
  煮詰まってどんどんペースを狂わしてる
  よし!こいつをもつと焦らせてやろう
  一寸頑張ってこいつを追い抜こう

人生という名のマラソンを誰もが懸命に走る
その価値とは何なのか

舞台終了。会場から大きな拍手が湧きあがった。

公演後、疲れた身体、脚を引きずりながら倉本さんは反省会の場所へ。だが、眼差しは鋭かった。

  君、走り出しの台詞が早かったね。台詞、変えます。

倉本さんは、まだ走り続ける・・・終。

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番組HPに、番組で放送されていない記述を見つけました。

倉本は日常から、人がどういう状態でどういう生き方をしているか、つぶさに観察する。「嫌いな人ほどよく観察してみろ、次第に好きになるから」とよく口にする。発信以上に、受信を重視するのだ。それは、想像力をどう発展させるかの訓練でもある。空想力を最大限に働かせれば、4人の人物が、16人の人物像に見えてくるという。そこから多種多様の人物が形成され、強い個性の人物が生み出されていく。倉本の手にかかると、欠点さえも愛すべきチャームポイントになる。倉本の目はいつもギラギラとしていて、おもしろいと思うことをキャッチすると、絶対に手放さない。

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私、若かりし頃、「人はなぜ走るのか」について誰かと語り合った記憶がございます。そこに道があるから、とか、今生きてる実感を味わうたる、見知らぬどこかに行ってみたい、逃げたい、自分を見つめ直すため、エトセトラ・・結局、答えは出ないまま。マラソン中継や箱根駅伝なんぞを観るたびに考えたりもしますが、答えは出ないまま。舞台「走る」の告知を見たとき、すかさずチケットを購入。答えを知りたいわけではなく、「走る」そのものを表現しようとしている舞台があることに心が躍ったのでございます。走りながら台詞を言う、腹の底から発声しないと観客に声は届かない、腹の底から出る言葉は、例え台詞といえども役者の素の部分が混じっているはず、私はそう思います。来月観劇予定ですが、今から楽しみでございます。なんだか、宣伝ブログのようですが、まぁ、良いです。

それと、芝居の練習中の身としましては、番組内で倉本さんが役者へ放つ言葉が胸に突き刺さりました。私は、プロ志望でもなんでもないので、比較するのはおこがましいとは存じますが。演出家の求めるものが、自分の想いと全くかけ離れていても従うのが常識。演者の立場である以上、我は捨てるべきですよね、これが出来ないようでは仲間と一緒にモノ作りする資格なしですよね。私、表面的に合わることは出来ても、内心?と納得できないことがあったりしたら、ちょいちょい顔に出そうになります。未熟者でございます。なんやかやありますが、今、自分にできること、をしておきましょ。

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日々感謝です。